光と水と大地の詩

木の実はもとへ
人間はいろんな言葉を話す生き物じゃ
しかし 人間にしか判らん言葉を話しておる
いぃや 人間同士でも判らん言葉を話しておる
不思議な生き物じゃ
わしなど 小さな虫から この大地や お天道様とも話ができる
時折 このわしに話しかけてくる 人間の子供もおるが
大きくなったら忘れてしまうようじゃのう

「木の実はもとへ」という人間の言葉がある
木の実はその根本に落ちることから
物事はすべてそのもとへかえる という意味じゃそうだが
まだまだ人間は わしらのことを判っておらん

確かに このわしの黒い小さな実も この根本に落ちる
もう何百回と 小さな実が落ちて その幾つかは わしの根本で
小さな双葉を開いておる じゃが その幾つかは 鳥や獣に運ばれて
きっとどこかの丘に立っておるはずじゃ 遠い海の向こうの椰子の実は
何千キロと旅をして 流れ着いて芽を出すんじゃ

この丘の北にも 大きな海がある その向こうの大きな島から
人間が大勢やってきた 木の実やタネも 渡りの鳥と一緒にやってくる
歩くことのできんわしらは まあそれなりに 旅をしておるんじゃ

人間の作った言葉じゃから 別に気にはしておらんがのう