光と水と大地の詩

駄々っ子
このあたりでは一番高い丘に立っておるから
南の方に海が見えるんじゃ
伊勢湾と三河湾と云う
二つの海が見えるんじゃ
その昔は お月さんの光でも 夜の海が光って見えたもんじゃ
近頃は昼でも見えん日が多い なにやら空が焦げ臭いんじゃ

きれいな海じゃったが 時々は暴れておった
「大木は風に折られる」というが いつもは呑気な風も
体ごとこのわしにぶつかってきおった

わしにとっては大切な雨も 別人のように暴れ狂って
わしを引っかいて行くんじゃ 麓の川も堤が切れて大騒ぎじゃった
雨にしても風にしても 普段はあんなにおとなしいのに
暴れ出すと手がつけられん まるで駄々っ子のようじゃ

わしは大地に大きく根を張っておるが
風や大地が暴れた時は 何度も折れそうな痛みが走った
小さなものなど ひとたまりもないわい

何故暴れるのかは 自分でも判らんと 呑気に風が話すんじゃ
まあ 自分でも判らんことは このわしにもたくさんあるがのう

どこぞの先生に聞いたとしても 判らんものは 判らんもんじゃ