光と水と大地の詩

丘に立つ楠木
わしは、クスノキである。取り立てて名前などない。
が、しかし いつの頃からか唐変木と呼ばれておる。
誰がつけたか、ほかにも洒落た名前があろうに。
まぁ、名前などどうでもよい。

所詮、人間が勝手に呼んでおるだけじゃ。

わしは、空ばかり見ておった。
子供の頃は、大きくなることだけを考えておった。
お天道様めざして、上に上に伸びることだけを考えて、
仲間たちより少しでも上に行きたかったんじゃ。

じゃが、ある時、気がついてみるとのぉ
一人でこの丘に立っておった。
いつの間にか、誰よりも大きゅうなって、
わしの仲間は、もう誰もおらんようになってしもうた。
近頃はこの下の桜が少し大きゅうなって、時々話しもするが、
長〜い間、この丘に一人で立っておる。
じゃが、退屈はせなんだ。

風が吹けば風と、雨が降れば雨と、
夜になればお月さんが、何やかやと話しかけてくる。
今日はひとつ、わしの独り言でも聞いてもらうとしよう。